健康ワンポイントレッスン

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「副腎皮質ホルモン」

副腎皮質ホルモン剤という治療薬

「ホルモン剤は怖い」と語る人がいます。自分自身がホルモン剤を利用したことはないはずなのに、そのように吹聴するのですから、一種のマスコミ効果なのでしょう。

人体の血液内は、ホルモンだらけです。このホルモンが人体の成長や機能を調節しています。ホルモンなしで生きていくことはできません。

「ホルモン剤は怖い、と語られるのはなぜか?」という疑問がわいてきます。おそらくスポーツ競技におけるドーピングで利用された筋力強化剤(ホルモン剤の一種)の使いすぎによる健康トラブルが吹聴されたからでしょう。ドーピングを禁止しなければいけない立場の人たちが「ドーピング防止」の代名詞として、「ホルモン剤は怖い」と語ってきたのです。

ホルモン剤の一つに、副腎皮質ホルモン剤という治療薬があります。今回はこれについて語りましょう。

太平洋戦争の頃、戦闘機に乗り込んだ米兵のパイロットが風邪をひき、喉の痛み、咳、痰、鼻水で大変な状態でした。しかし、飛んでいるうちに敵地が近づくと、この症状はピタリと治まってきます。強い緊張状態になると症状が消滅するのです。皆さんも日常生活で集中力を高めたり、強い緊張状態になったりしたときは頭痛や鼻水などの症状を忘れてしまう、という経験があると思います。

「なぜ、症状がなくなるのか?」を研究した結果、発見されたのが副腎皮質ホルモンでした。腎臓の上端にある副腎という臓器から極少量だけ分泌される成分で、炎症を強力に鎮める作用を持っています。この副腎皮質ホルモンは、化学構造上「ステロイド骨格」というものを持っているので、通称「ステロイドホルモン」略して「ステロイド」と呼ばれることがしばしばです。

「炎症を強力に抑える」作用を持つので、炎症性疾患の治療に使われます。慢性関節リウマチや自己免疫性肝炎、ネフローゼ(腎臓の病気の一種)、その他いろんな病気の治療に利用されます。昔は、風邪の治療薬としてもよく利用されました。また、花粉症の症状を抑えるので、花粉症注射としても利用されています。

さて、この副腎皮質ホルモン剤は慢性疾患の治療によく利用されます。慢性疾患は長期間患う病気ですから、長期間にわたって投与されることが多いです。

人体から自然に分泌される副腎皮質ホルモンの量を錠剤1錠の中に納めたのが、副腎皮質ホルモン剤です。「副腎皮質ホルモン剤を1日4錠飲んでいる」といえば、人体内の通常分泌の4倍の量を摂取していると考えてください。副腎皮質ホルモンの特徴は、人体の外から投与されると自己分泌が減ることです。外から1錠投与されると自己分泌はゼロになります。2錠以上投与されても自己分泌はゼロです。三分の一(1/3)錠のみ投与されると、人体内から三分の二(2/3)に相当する量が分泌されます。人体内はそのような調節機能を持っています。

1錠以上の副腎皮質ホルモン剤を長期間内服していた人が、突然内服をやめるとどうなるでしょうか。自己の分泌が再開されるまで2〜3日かかります。ということは、〜3日は体内に副腎皮質ホルモンがゼロの状態になります。元の病気は当然強烈に悪化しますが、それと同時にかなり激しい頭痛を感じます。

ですから、副腎皮質ホルモン剤を長期間投与されていた人が、その薬を中断するときは、徐々に減らすことになります。徐々に減らして、一日投与量を1/2錠、1/3錠として、その状態を数日以上続けてから、中止します。

副腎皮質ホルモン剤は、長期間投与されていない場合は、突然中止してもたいした問題になりません。ひどい風邪をひいたときに、ためしに、副腎皮質ホルモン剤を1日に4錠ほどまとめて飲んでみてください。症状をぴたっと忘れることができます。数日続けて突然やめても問題は起こりません。

副腎皮質ホルモン剤を1〜3回限り投与するときに注意してほしいのは、糖尿病患者の場合です。血糖値が瞬間的にかなり高くなることがあります。また、胃潰瘍をわずらっている最中の人も要注意です。花粉症注射などは一回限りの投与ですが、糖尿病患者や胃潰瘍患者には投与しないようにしています。

副腎皮質ホルモン剤は、慢性疾患患者に長期間投与することが多いですので、副作用の問題を熟知しなければいけません。一般に医薬品の長期連用に関しては副作用の厳密なチェックが必要です。副作用は、普通の場合は何かの自覚症状になりますが、副腎皮質ホルモン剤は炎症を強く抑えるので、自覚症状にならないことがしばしばです。副作用さえ抑えてしまうのです。(だから、何かの薬で全身に発疹ができた場合、副腎皮質ホルモン剤を大量に注射して、一気に副作用を押さえ込む治療をすることがあります)

副作用としては、骨がもろくなる(骨粗しょう症)、血糖値が高くなる、免疫力が低下する、胃潰瘍や十二指腸潰瘍ができやすくなる、などがあります。報告された稀な副作用は、数限りなくあります。

さて、人体内の通常の1日分泌量を1錠に納めた、と表現しました。もちろん、人それぞれに分泌量は個人差があります。個人個人の分泌量の差は、その人の体質だけでなく、実は「顔の形」にも影響しています。

副腎皮質ホルモンの分泌が多いと、丸顔になるのです。首の廻りにも脂肪がつきやすくなります。わりと一目で、「この人、副腎皮質ホルモンが多そうだなあ」と直感できます。

連日の飲酒は、副腎皮質ホルモンの分泌総量を増やします。毎日お酒を飲んで丸顔になって、首廻りが太くなっている人は、そのお酒をやめると顔立ちがすっきりしてきます。

ストレスは、副腎皮質ホルモンの分泌を高めます。副腎皮質ホルモンは、血糖値を高める作用を持ちますので、まとめると、ストレスで血糖値が上がります。だから、糖尿病はストレスで悪化するのです。糖尿病はお酒を飲んでも悪化しますが、これも副腎皮質ホルモンの量が増えるからです。

花粉症の症状を感じるとき、感じないときがあります。自己の副腎皮質ホルモンの分泌と関係しているかもしれません。

ストレスが強いと、脳の下垂体という部分からACTHというホルモンが分泌されます。このACTHが副腎に働きかけて、副腎皮質ホルモンを分泌させるのです。だから、ストレスで副腎皮質ホルモンの分泌は高まります。ACTHは同時に、皮膚に「しみ」を作る作用を持っています。ということは、ストレスが強いと「肌にしみができやすくなる」ということになります。

副腎皮質にまつわるいろいろなお話、楽しんでいただけましたか?